CVCAでステークホルダーとの価値連関(価値交換)を考えてみた

 

(中期経営計画の話、その1)

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日頃より、ブラインドサッカー、ロービジョンフットサルを応援、ご支援いただき、ありがとうございます。JBFA専務理事の松崎英吾です。これから複数回に渡りJBFAの「中期経営計画」についてブログに書いてみようと思います。

 

まず、私たちJBFAには、いろいろな収入源があります。今回は、その収入の価値はどこからきているのか?というお話です。

 

スポーツの中央競技団体(NF)の収入源には、どのようなものがあるでしょうか?

 ・放送権利収入

 ・スポンサーシップ収入

 ・チケット収入

 ・物販収入

メジャースポーツでは上記が比較的高い割合で形成されるのでしょうか。

 

そのほか、

 ・登録料収入

 ・参加費収入

プロスポーツクラブではないNFでは、これらの収入比率の高い団体も見受けられます。

 

先日中期計画をアップデートしたのですが、私達の「収入源」や、「収入の価値」について話をせずに本題に入っていくと理解が深まらないと思うので、今回は中期計画の説明の1回目ではあるのですが、少し遠回りしてお話しします。

 

価値の交換がお金に変わる

お金の交換が発生するのは、なんらかの価値の交換が行われているからです。

たとえば、

・お腹が減っていて、空腹を満たすという価値に、お弁当を購入します。

・ボーリングでは楽しさと、友だちとのよい時間を過ごすという価値に、利用費用を支払います。

多くの場合、この価値交換は上記例のように対になっていてシンプルです。

それは、市場の原理を通じて、需要と供給がマッチされていくという原則があるからです。

他方で、その市場原理で解決しにくいのが「社会課題」といわれるものです。

たとえば、

・空腹でも、お金を払えない状態に、社会構造上なりやすい人たちがいる。だから、支援が必要で、お弁当を販売・購入するという対の価値交換ではなく、第3の支払い者として福祉施策などが存在する。

・視覚に障がいがあり、働く機会を確保することが相対的に難しい。だから、国が障害者雇用率を設定して、雇用が進みやすいよう政策を設定している。

市場原理だけでは解消されにくいため、政策やNPOのような存在が、その狭間を埋めていくのです。

JBFAに関連することでたとえると、

視覚障がい児は、運動能力が統計的に低いです。これは、そもそも身体的に障がいがあって低いわけではなく、学校のクラブ活動に運動部が少なかったり、地域のスポーツクラブで受け入れてくれなかったりという社会構造があり、その結果、相対的に運動する機会が減っているからです。

この課題解消を、市場原理で考えれば、保護者がお金を支払って、スポーツクラブに入会させる。

しかし、それでは受け入れてくれない可能性が高いため、ガイドをつけたり、受け入れてくれるクラブへいくために遠方に通わなくてはいけなかったりする。市場原理を超えた不都合が生じるわけです。

お金を払えば解決できるのならまだ解消の可能性がありますが、そうではないから、「社会課題」といわれます。その解消のために、1対1の価値交換ではない必要が生まれるのです。

 

CVCAという手法について

このように、社会課題性があるとき、商品を売る・買うのような価値の交換が対になりにくい。そのため、複合的に活動を展開する必要がある場合があります。

それを可視化し、分析する手法がシステム・デザインの分野にあります。それが、CVCA:Customer Value Chain Analysis*と呼ばれるものです。これは価値の繋がりとお金の流れの繋がりを分けて考えることができる手法です。

 

JBFAの第1期ともいえる2002年から2004年を例に見てみましょう。

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価値が矢印の元から先へ提供されているとき「!」で示しています。

お金の経済性が発生しているものが「$」で示されています。

手法の基本的な使い方は、ステークホルダーを洗い出し、それを!と¥などでつないでいくのですが、JBFAの構造理解を目的にしたので、私たちは「機能」でまとめ、構造化しました。

この頃、予算規模は会費収入が数十万円、助成金が代表の活動と日本選手権の開催費用に400万円ほど付いていた時代です。

左図は、普及機能・強化機能・大会機能で相互に価値貢献が図示されていますが、そこに経済性は生まれていません。

後期の右図で、それらを取り組んで実績が少しだけできたことで、福祉系の助成金を申請し、経済性が発生しています。

これだけ見ると、普及機能はお金を直接的に生んでいないように見えますが、普及機能があることで、活動が始まったばかりのブラインドサッカーにおいて、大会に参加するクラブが現れたり、代表が遠征するのにメンバーも足りない時代でしたので、参加者となる選手発掘の機会になったりしていました。普及機能が遠因となって、助成金から資金調達できていたとも言えます。

この頃は、まだとてもシンプルで例示としてもわかりやすいですね。

 

これが第4期(2013年から2016年)でこう変化します。

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詳細の解説は省きますが、価値の発生がダイレクトにお金に繋がらないところだけピックアップしてみましょう。

①国際大会の有料化

JBFAはパラスポーツでも先駆けて有料化にチャレンジしてきており、「それが自立につながっているんですね」という取材も多く受けました。が、実はそうではない。有料化で得られる収入はもちろんあり、”国際試合の開催”と”観戦での楽しみや新しい発見”のあいだには対価性が発生しています。しかし、そこだけでは興行としてなりたたないのも確かです。

国際大会機能からの「!」矢印の先は、”広報機能”や”D&I”(ダイバーシティ&インクルージョンの推進機能)に出ています。同時に、「$」は”民間資金調達機能”につながっています。

直接的なチケット収入よりも、そのような価値連関に国際大会の意義が見出せるわけです。

②IF委員会(国際情報)機能

この頃、2013年ロービジョンフットサル世界選手権、2014年世界選手権、2015年アジア選手権と、立て続けに大きな国際大会を招致、開催していきます。そのためには、IFとの強固な関係性も必要です。IF機能からは、国際大会主催機能に「!」の矢印がでているのはそのためです。

その意味では、IFとの連携が、民間資金調達の遠因にもなっているともみえます。

この例のIF機能自体は、コストが発生している機能であり、直接的に「$」を生んでいるわけではありません。同様に、“クラブ支援機能”や“普及機能”も見方によっては活動コストに見合わないと見なされる可能性がある活動かもしれません。

しかし、これらの価値の繋がりが、別の価値接点でお金に転換する、価値とお金の転換点が、しばしば遠くなること、これがJBFAの特徴でもあるのです。

 

脚注:

CVCA(Customer Value Chain Analysis):

価値の流れを可視化するために、自分(の組織・団体)を中心に、誰と、どんな価値をやり取りしているか分析した手法。