福祉事業としてのJBFA

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皆さま、こんにちは。日頃より、ブラインドサッカー、ロービジョンフットサルならびに協会活動にご理解とご支援をいただき、ありがとうございます。

日本ブラインドサッカー協会(JBFA)理事長の塩嶋史郎です。

10月になりました。
カレンダーを見ると、「目の愛護デー」(10/10)や「世界視力デー」(10/12)がありますね。

さて、今回のテーマは、近年JBFAが力を入れ取り組んでいる『福祉事業』についてです。

JBFAでは、中央競技団体としての役割機能を果たしていく一方、「競技」と「事業」を両輪に、事業型・課題解決型NPO法人として様々な事業に果敢に取り組んでいます。

ご存知のようにダイバーシティ&インクルージョン事業の「スポ育」や「OFF T!ME」、「OFF T!ME Biz」、また「キッズキャンプ」、「キッズトレーニング」、「地域リーダープログラムwithブラサカ」などの既存プログラムにも取り組んでいます。また、人が無意識に持つ偏見を可視化する「UB-Finder(ユービーファインダー)」という測定ツールについての利活用も積極的に推進しているところです。

今回は、『視覚障がい者ならどなたでも!おたすけ電話相談窓口』(以下「おたすけ電話相談窓口」、『同行援護サービス』この2つの事業について、その内容と考え方を「福祉事業としてのJBFA」という観点でしっかりとご紹介します。

なぜ、いま福祉事業なのかについて言及します。

ここで、背景に触れておきます。
きっかけですが、コロナ禍の緊急事態宣言に端を発しています。

“新しい日常”、“withコロナ”、“新しい当たり前”、“ニューノーマル”という中で新しい生活様式が生まれました。誰もが不安になり、戸惑うばかりでした。「人間は、80%の情報を視覚から得ている」と言われています。私たちを取り巻く環境は、都市構造、道路や駅、建物など日常のハード面のバリアフリーは進化しているものの、今なお視覚障がい者やマイノリティの人たちには配慮されていないことが多いのです。平時においても課題が多いのに、未曾有の状況ではなおさらです。

一つ目は、「おたすけ電話相談窓口」です。
2020年4月18日に「視覚障がい者ならどなたでも!おたすけ電話相談窓口」を開設しました。
学校は休校、企業は在宅勤務で何もできない状況が続きました。

これは、対面事業が中止なったことにより一旦活躍の場を失った視覚障がいの当事者の職員を含む有志10人でスタートしたものなのです。

真っ先に頭をよぎったのは、雇用を守る、生き残る、事業の存続でした。長引くコロナ禍で、JBFAも例外ではありませんでした。

(1)おたすけ電話相談窓口
すべての視覚障がい者とその家族(同居人)が対象で、その方々に向けてサービスを提供しています。
・電話/ 050-3627-5015
・受付時間/17~19時 月~木曜日(祝日除く)
・回答は、3営業日以内

<2023年9月1日現在>
(これまで、電話相談の稼働日や受付時間や受付方法の種類など何回か変更して推移してきています) 

緊急事態宣言、まん延防止等重点措置では、新しい概念や初めて遭遇することが多々ありました。
新型コロナが5類になり、忘れかけているかもしれませんが、当時は自粛要請、不要不急の外出を控えるなどの状況が発生しました。少し思い起こしてみてください。

三密、ソーシャルディスタンス、2メートルの距離を視覚障がい者がどう把握するのか、見えないので商品に触る、入口にある消毒液はどこにあるのか、マスクが店頭から消えた、非接触型のエレベーターボタンが登場した、タッチパネル型の買いもの決済、ガイドヘルパーの手引きはどうしたらいいのか、後述する同行援護の難しさもありました。

飲食業の時短営業、飛沫防止のアクリル板設置、映画館、舞台やコンサートのキャンセル、チームの集合練習ができない、トレーニング施設が利用できない、そしてスポーツ観戦の観客数や声出しルール、ワクチン接種、県を跨ぐ移動の制約、入学式・卒業式の中止、運動会・修学旅行の中止など···。

視覚障がい者の方には、コロナ禍だからこその不安や悩み、何をどこに誰に相談したらいいのかという思いが増幅しました。

以前よりあった潜在的な問題がコロナによって顕在化したのかもしれません。様々なことが垣間見えてきたのです。在宅勤務、テレワークという状況の中、様々な業種の各社ともコールセンターが機能しなくなり、消費者や利用者にとっては問い合わせ先を失う事態も起こりました。

「おたすけ電話相談窓口」は、限定的コールセンターの役割も果たせるのではないかと考えたのです。私たちも、個々のお問い合わせにより時間の経過とともにリテラシーが蓄積されてきたのです。ミッションの「ブラインドサッカーに携わるものが 障害の有無にかかわらず生きがいを持って生きることに寄与すること」 に繋がります。

二つ目は「同行援護サービス事業」です。
2021年3月に事業所を開設し、8月から取り扱いを開始しました。

ここで、もう一度コロナ禍の中での国内競技と国際大会を振り返ってみましょう。

ブラインドサッカー男子日本代表が初出場する「東京2020パラリンピック」に向けた機運醸成として、東京(品川)で2018年、2019年、2020年と3年連続の公認国際大会「IBSAブラインドサッカーワールドグランプリ」の開催を計画しました。集大成と位置づけた3年目のパラリンピックイヤーの2020年3月は、新型コロナウイルスによる感染症拡大防止に対応するため同大会の中止という苦渋の決断をしました。2021年6月に開催された同大会は、万全の感染症対策のもと無観客という制約での開催となりました。さらには1年延期となり2021年8月に開催された「東京2020パラリンピック」は、ずっと描いていた満員に埋まるスタンドは実現せず無観客での開催となりました。

地域リーグも中止となり、主要国内大会も変則的な大会となった時期です。厳しい状況に置かれました。「スポ育」も新たに対面ではないオンライン型の授業を開発するなど、いろいろな試行錯誤をしていた頃と時を同じくします。

二つの新しい事業の創出は、コロナ禍を転機としているのです。

(2)同行援護サービス事業
この新しく立ち上げた福祉事業は、障害者総合支援法に基づく福祉サービスで、*定款の事業の種類にも明記しています。視覚障がい者の外出をガイドヘルパー(同行援護従業者)が同行し移動の情報をサポートしていくものです。買物、通院、運動、レジャーなど余暇活動全般について幅広く使えます。但し、通勤と通学には使えません。

ブラサカでは、普段から選手の移動支援が行われていましたが、仲間や関係者の好意や家族の協力によるものが殆どでした。

そこで同行援護の利用を拡大することにより、サービスや制度の持つ利便性をこの仕組みに置き換えることを考えたのです。それぞれが、より主体的に行動できるシステムを構築したのです。

コロナ禍までは、対象を僅かなブラサカ選手にフォーカスしていましたが、「おたすけ電話相談」で選手以外の視覚障がい者の移動手段ニーズの高さを認識するに至りました。

本格的な取り組みに際し、準備段階で気づいた課題は、ガイドヘルパーの高齢化、人員不足、マッチング率の低さ、利用するまでの作業負荷にあると分析しました。

具体的に実施したのは、独自のマッチング用のスマホアプリの開発です。

その名も「meetme-X(ミートミークス)」。名称とロゴには、人と人が交わることで「目」が生まれて、人と人がつながることで「笑顔」が生まれるという願いを込められています。 

この新たなツールには優れた特長があります。

・リクエストから完了まですべてアプリで完結すること
・事業所が調整役として介在する非効率さを省き、利用者とガイドヘルパーが直接マッチングできること
・個人情報保護にも配慮し、マッチングまではニックネームでやりとりすること
・弱視の方でも見やすい画面の工夫と全盲の方には音声読み上げにも対応していること
・複数候補者がいる場合は利用者が選択できる、などが挙げられます。

利用者の声を拾ってみると、「申込み手順がわかりやすい」「レジャーにも使えることを知った」「チーム関係者の好意や家族の協力に頼っていたのが、気兼ねなく頼めるようになった」「スマホの読み上げソフトが使いやすい」「今まではガイドヘルパーの予定に合わせていたのが、自分の都合で頼めるようになった」「以前はガイドヘルパーが高齢の方で不安を感じていたが安心した」「少し遠方にも行けるようになった」という高い評価を得ています。

また、福祉業界でのガイドヘルパーの不足や高齢化が進む中、協会自らが精力的に同行援護従業者の養成研修を実施し、質の高い人材の確保をしています。*10月期も募集中です。

さらに、沖縄から北海道まで国内30を超えるクラブチーム単位をベースにして全国への展開と拡大にも取り組んでいきます。

具体的には、クラブチーム内の視覚障がい者選手と晴眼選手が練習や試合参加時に同行援護を活用することにより、チーム寄付収入やガイドヘルパー役となるスタッフへの時給発生のメリットが生まれます。ひいては、すべての視覚障がい者に対してもその地域における同行援護のハブになる構想を考えています。ビジョンである「ブラインドサッカーを通じて 視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現すること」に結び付きます。  

こんな光景を描いています。

大きな大会の試合会場には、すでに*リレーションセンターが設置されており、観戦に訪れたマイノリティや多様な人たちに対応しています。アクセシビリティシートも用意されています。

JBFAでは、満席で埋まる試合会場の実現に果敢に挑戦してきています。

試合会場までは、同行援護サービスのガイドヘルパー、試合会場に来たらリレーションクルー、そんな連携と補完、シナジーが生まれればと願っています。

視覚障がいのある方が、主体的に気軽に外出できる利便性にも大きく貢献したいと思います。

とはいえ、まだ緒に就いたばかりです。これからです。

一人ひとりの行動によって 「障害の有無にかかわらず生きがいを持って生きることに寄与」し、ともに「当たり前に混ざり合う社会を実現」していきましょう!

*リレーションセンター
主要大会では、試合会場にリレーションセンターを設置しています。障がいのある方や、一時的に身体の機能が低下している方にも試合観戦をお楽しみいただくためにサービスを用意し、サポートツールを提供している。
リレーションクルー(サービス介助士) が、車椅子のお手伝いや手話通訳、視覚障がい者の手引きなどお困りごとに対応。
視覚に障がいがある方でも臨場感ある試合観戦ができる音声ガイドシステム(実況中継)の貸出/ 拡大ガイドブック/触地図/手話通訳/筆談ツール /補助犬専用トイレの設置など。
<協力:公益財団法人日本ケアフィット共育機構>

*定款(抜粋)
JBFA定款
(事業の種類)
第5条 この法人は、第3条の目的を達成するため、特定非営利活動に係る事業として、次の事業を行う。
(1) 競技事業
(2) 大会事業
(3) ダイバーシティ事業
(4) 障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業
(5) 介護人材の育成事業
(6) その他目的を達成するために必要な事業

*「同行援護」の研修を受けてガイドヘルパーになりませんか!
(10月期の同行援護の受講生募集中)
https://www.b-soccer.jp/news/23399-2023oct_support
<お問い合わせ先>
福祉サービスグループ
担当者:岡本 邦夫
Eメール:meetme-X@b-soccer.jp
TEL:090-5433-8564
特定非営利活動法人 日本ブラインドサッカー協会
〒169-0073 東京都新宿区百人町2-21-7 ペアーズビル3階

■「視覚障がい者ならどなたでも!おたすけ電話相談窓口」
 ・ウェブサイト:https://www.jbfa-otasuke.com/
■「同行援護サービス」
 ・ウェブサイト:https://www.b-soccer.jp/news/19062-meetme-x-2