「事務局長」というポジションから考える組織

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「事務局長」ってなにする人?

日頃より、ブラインドサッカー、ロービジョンフットサルを応援、ご支援いただき、ありがとうございます。JBFA専務理事の松崎英吾です。今月は「事務局長」というポジションから考える組織、についてお話しようと思います。

組織にはその特徴に合わせたポジションがあります。

トップを表現するポジション名としても、会長、社長、代表、事務総長、次官、理事長…etcと、さまざまです。

日本ブラインドサッカー協会(以下、JBFA)は、法人格はNPOであり、スポーツ界における性質は中央競技団体です。NPO、競技団体、どちらの特徴でも「事務局長」というポジションは一般的でもあり、事務方のトップを指すことが多いようです。

他方で、私自身「事務局長ってなにする人?」という質問もしばしば受けます。

組織の規模が小さければ事務局長は何でも屋よろしく働きます。それをみたら、たしかに、選手からしても、外部ステイクホルダーの方からしても、事務局長ってなにをしているの?という感想が漏れ聞こえてくるのではと思います。

その何でも屋っぽい、かつ、事務方のトップという意味で使われていた「事務局長」というポジション名、JBFAでは最近取りやめました。

 

組織は柔軟に変わっていくもの

取りやめた主な背景としては以下と考えました。

1つ目は、JBFAの組織規模が変化していること。

競技を推進するコーチやスタッフの人数や、事業型であるJBFAの日常の業務運営に携わるスタッフの人数は、増えてきました。人が増えれば組織に構造が必要になり、部署が増えました。これまで事業運営の責任者として位置づけられた事務局長に、それらの部署が紐づく形がとられてきました。そのため、競技部門から、体験学習を提供する部門、さらには管理部門も事務局長に紐づいていました。

2つ目は、分権化の必要性。

1つ目の結果、権限や職務が事務局長一人に偏りがちになりました。

権限が偏るメリットもデメリットもありますが、デメリットのほうが増えてきたように思いました。管掌する部門が広くて把握能力が落ちてきたこと、結果、意思決定にもゆらぎを感じ始めていたこと、今後の成長を見通したときに、その偏りが制約条件になりそうなこと。

また、権限も偏れば責任も偏ります。成果に対する責任を組織のさまざまなレイヤーとポジションで担える健全性も求められます。結果、分権化の必要性が高まってきました。

3つ目は、新陳代謝の促進。

上記2点から、事務局長は、交代がしにくい、あるいは、若手が目指すポジションとしてもイメージがしにくいと言った声もきかれました。

また、事務局長というポジションから本稿を書き始めましたが、当然、組織としても課題がありました。

1つ目は、人で組織が決まりがちだったこと。

本当に小さい規模で長年取り組んできているため、仕事が人に張り付くのはやむを得なかったと思います。他方で、働く人数が変わるなか、「人ありき」で組織を定義していると、人が制約条件となります。事務局長の課題と同じです。

2つ目に、組織を分けても、兼務が多いこと。

いまも兼務が解消しているわけではありませんが、非効率な兼務や過剰な兼務も多かったのかもしれません。そうすると、結局、1つ目の課題に戻り、特定の人に応じて仕事が進むことになります。

3つ目に、人材の流動性が低かったこと。

事業が広がったり、有給で担える役割が広がったりしたことで、必要なポジションが増えます。他方で、小規模の頃から働いている人たちには、特定のジョブを担うこと、という前提でJBFAに加わっていることも多くみうけられました。職種ごとに採用をしていたり、特定職種としての雇用契約が多かったりしたことも原因です。

これらが、異動や組織変更をしにくい土壌を作っていたようにも思います。

人材育成としても、組織の新陳代謝を高めるためにも、主体的な異動や組織変更、昇降格などが必要と考えます。

 

これらを踏まえて、この秋にどのような変更があったのか

1つ目に、執行役員を設定しました。

事務局長のレイヤーの職務を分掌し、競技・事業運営・経営管理・スポーツ推進という概念でくくり、それぞれに執行役員を配置しました。競技部門については、1年早く導入していましたが、段階的に事務局長職を解体していくことは、意図してきたものでした。

なお、執行役員は内部職制として設定しています 。JBFAでは外部理事を中心とした理事会を採用しており、事業執行に関する監督責任を担っている形式です。事業面の執行責任者を執行役員として分担することで、権限と責任の分化を図ります。引き続き、外部理事が執行機能を監督する統制については維持していくことになります。

2つ目に、部格の整理をしました。

人に基づいて生まれてきた部格もあり、「部」とは?「グループ」(一般的にいう「課」にあたる)とは?といった整理が不十分でした。

部は、戦略が同じ機能を有し、求める結果が密接であるもの。部としてのKGIが組織の評価指標に紐づくこと。

グループは、同じ部の戦略の中で、戦術が変わるもの。グループ単位で確認したいKPIがあり、部のKGIに紐づくこと。

などと、整理しました。

もちろん、画一的な意味で整理したわけではありません。いま、中期計画のアップデートを並行して議論しており、それらを反映していくことを見越しています。言い換えると、中期的な戦略の実行に、合理的・効果的といえる(現段階では「言えそう」という程度ですが)くくり方にしています。

たとえば、大会運営グループと営業グループが同じ部になりました。営業グループは、大会のスポンサーももちろん扱っていますが、日本代表のスポンサーや、JBFAパートナーとの契約遵守など、幅広いサービスを扱っています。でも、大会運営グループと同じ部です。その背景は、既存顧客を対象に、関係性の維持、向上を図っていく目的に、重点をおいたからです。

もちろん、しっくりきにくい面や、いまだ暫定的な置き方をしている部署(機能)もあります。

ただ、それは戦略が見えていないことの裏返しでもあると感じており、その機能を中期的にどう育てたいのか、どんな成果に結びつけたいのかの議論の中で、柔軟に再整理ができれば良いと思っています。

組織改編というと大仰に聞こえるかもしれませんが、柔軟に組織を変えられる、働く人や関わる人がその変化に素早く対応できることが、いまのJBFAのフェーズでは大切になってきているようにも感じます。東京パラリンピックが終わり、企業ではダイバーシティの概念が浸透し、良し悪し含めて外部環境は短期的に大きく変化するようになりました。コロナがあったことも大きいです。

その変化に、組織として適切にリアクションできること、できるなら、先回りして対応できる能力を持つこと。

言うは易しですが、いまJBFAでは課題となっていることだと思います。

 

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最後に、JBFAでは中期計画のアップデートをしています。中期計画においてはトップダウンで策定する方法もあれば、外部コンサルに作ってもらうやり方もあります。今回わたしたちは、若手ながら中堅と言えるメンバーが強く関わるボトムアップ(そういう言葉はないかと思いますが、広い意味でのボトムアップではないので「ミドルアップ」のような)プロセスを組み込み、そこに外部のコンサルティングが支援している形を取っています。

その中堅層や、さらに控える若手たちが目指しやすいポジションや組織の設計も、いまわたしたちが抱える課題への一石になると考えています。

JBFAはいま厳しい 環境にあります。財務的にもですが、さまざまな事業の壁を乗り越えていくためにも、過去の成功体験やその体制ではなし得にくくなっています。

ポジティブに言えば、成長痛でもあるはず。

いままでの成功体験から脱却し、アップデートした組織のあり方で、ビジョン・ミッションを目指し、事業としても十分な継続力を保っていきたいと思います。